大晦日は蕨で

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佐久間は10月に蕨に越して来たばかりだった。転職にあたり地元の広島から蕨にある会社の寮に移ってきたのだ。入社して仕事に馴れていないこともあり、会社と家との往復しかしてこなかった。会社は西川口にあり、京浜東北線で一駅。池袋や上野に飲みにでることはあったが、蕨周辺は出歩いたことがなかった。

 

接客業のため、年末年始も出勤しなければならない。特に佐久間のような上京組、かつ入ってまもないともなると、休まず働くことになる。

 

晦日の朝、早めに起きてしまった。9時には店が開くため8時半には出勤するが、それでもまだ時間がある。こういうとき、いつもならば朝のニュースでも見ながら時間を潰すのだが、年末のためバラエティの再放送が流されている。テレビ局は再放送をながしてサボりながら高給を取り、自分のような庶民はこうして働かなければならないのである。

 

テレビを消して家をでた。いつもの道沿いに和楽備神社があるのは知っていた。前職のときは土日休みだったので、友人と予定をあわせてこうした寺社仏閣巡りなどをしていた。今は休みも平日で、友人も近くにいないため、家で過ごすことが多かった。

 


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いつもより早めに出たため、時間に余裕があった。神社のなかを覗いてみる。結構大きな神社だ。大通りからはこの鳥居は見えていなかったため、少し驚いた。

 

「いい感じじゃん」

 

神社は初詣セッティングになっておりフライングで干支の絵馬も飾ってある。なかなかデザイン性もあり、かわいい。束の間の観光気分でイヤな気持ちも少し薄れた。しばらく敷地内をみてまわった後、いつも通りの駅までの道を急いだ。