夜の話

 その日は前週末の徹夜作業のあおりをうけてか、夕方からかなり眠かった。そのため私は夜7時くらいには布団に入り、深夜に早く起きてから作業しようと思い入眠した。思い通り2時には起きることができ、何かジュースが飲みたくなったので近所のコンビニに行くことにした。マンションをでると9月のわりに寒く、もう一枚はおってくればよかったと少し後悔していた。徒歩3分のコンビニにて梨のジュースを買い、マンションへ引き返そうとしたとき、私はポケットに何も入っていないことを自覚した。手にはジュースをいれたコンビニ袋が提げられている。しかし、ポケットには何も入っていない。これが何を意味するのか。私の住んでいるマンションは所謂オートロックというシステムを採用しており、共同玄関を一歩出ると鍵がなければ二度と入ることができない。二度と入ることができない。私は寝起きで出たために、その鍵を家においてきてしまったのである。他の一般的なマンションであれば共通のパスコードなどがあり、それを入力すれば開錠できるといった場合も多いだろう。残念だがしゃれていない私の住むマンションにそのようなしゃれたシステムは存在しない。今までこのようなことになったことは何度かあったが、それはすべて昼間のことであり、入場しようとする住人のあとについて入場したり、隣人は知り合いなので、隣人に連絡して開けてもらうことができた。しかし、このときすでに深夜3時になろうとしている。そのようなことはできない・・・。ふと周りを見渡すと、なんとなく落ち着いた気分になってきた。夜の街は静まっており、昼間は比較的交通量の多い目前の道路も、見渡す限り1、2台程度である。マンションから道を挟んで向かいには、少し高台になった、特に何が置いてあるわけでもない公園があり、特にすることもないため、私は4年間同じ場所に住んでいるにも関わらずその公園に足を踏み入れたことがなかった。・・・私は開き直ることを選択し、深夜の静まった街と公園を散策することにした。高台になった公園への階段をのぼる。高台になっているので今まで公園の敷地に何があるかは知らなかった。未知の場所というのは意外に近くにあるものである。階段をのぼり終えると小学校の校庭のような一周200ⅿくらいの楕円形のコースがかけそうな砂の公園が現れた。隅の方には肩身が狭そうにベンチやブランコがならんでいる。どうやらこの公園の主役は遊具ではないらしい。ベンチに腰掛け、先ほど買った梨のジュースを飲む。