近所にできた天ぷら屋で天ぷらを食べた話

 先日、中古で5000円で買ったCanonAE-1Pの試し撮りをしようと近所を徘徊していたところ、新しくできた天ぷら屋の前を通った。ちょうどお昼時だったのでちょっと入ってみることにした。天ぷら屋といっても厳かなのれんのかかった高級店ではなく、天ぷら定食750円の安い店だ。券売機で食券を買って店に入ると、客は思いのほか少なく席の3割もうまっていなかった。しかし、ホールの店員さんは2-3人いてみんな美人で、これだけで私の中の印象はよかったが、客数に対して店員が多すぎる店というのは長続きしないので、この店も半年したらなくなっているかもしれないなあなどと考えながら、天ぷらを待っていた。この店はすべてカウンター席で、揚がった順に長方形の銀の網ののった小さいバットに乗せていってくれるスタイルだ。まず来たのは「なす」。おろしの入ったつゆでいただく。感動した。さくっとした衣を噛むとじゅわーっと水分が口の中にあふれてきた。こんなジューシーななすって存在したのか。おそらく天ぷらという調理法でなければこの「なす汁じゅわー」は味わえないだろう。調理法が最大限に活かされている。それがなすという食材だということか。私は最近美味しんぼを25巻までいっき読みしたという経緯があり、頭の中でそんな解説をついしてしまった。それほどに美味しかったのだ。次にしし唐が来た。しし唐は普通であった。次に来たのはエビ。さくっ、ぷりっ。今まで食べたエビ天のすべてをウサイン・ボルトのように余裕顔で抜き去っていった。次はイカだ。イカといえば、なかなか噛みきれないもので、焼き肉のホルモンと並び飲み込みどころが分からない食べ物ランキングでは常に上位である。しかし、このイカは違う。おそらく仕込みでたくさん切れ込みを入れてあるのだろう。すっと噛みきれる。口の中に長期滞在することもなく、美味しさを残しつつすっと嚥下される。食材の良しあしに関係なく、できる工夫であるが、私が今まで食べた天ぷらでもイカフライでも、このような工夫をしているのはなかった。美味しい。天ぷらをすべて食べ終えると、カウンターに乗ったタッパーに目がいく。3つのタッパーにはイカの塩辛、カボチャの酢漬け、大根の煮物。普通はあっても塩辛までだが、こんなに種類があってしかも無料とは。昔、笑い話で「吉野家コールスローは無料サービス」という嘘に騙される話があったが、そのクオリティーでこの店は無料である。しかも塩辛を食べてみると、ゆず風味であり、ここにもこの店の工夫を感じる。おいおいこんな良い天ぷら定食が750円でいいのか。この店、おそらくそんなに長くは持たないであろう。つぶれる前にもう何度か来ようと思った。