中目黒と目黒川とタワマン
清水は汚い金髪をしていた。韓流アイドルの様な白みがかった金髪ではなく、浜崎あゆみが全盛期にしていたようなやや茶けた金髪。インスタで見つけて初めて行った美容院で染めた。イメージしていたのとは違ったが担当してくれた美容師の圧が強くいいだすことはできなかった。この間久しぶりに会った妹にも「あゆみたいだね」と半笑いで言われるような有り様だった。
マッチングアプリで知り合った男に呼び出され中目黒に行った。焼肉をご馳走になったあと、男の家に行った。中目黒唯一のタワマンの最上階。東京タワーがキレイに見えるその広い部屋に男は1人で住んでいるという。
帰りのタクシー代として3万円渡された。自宅は武蔵小山なので、タクシーを使えばそれほどはかからない。終電前の中目黒はまだ人気が多く、今日は冬の割に暖かい。
目黒川を下ることにした。当然ながら並木の枝に葉はなく、川面は静かで、どっしりと構えているような印象を受ける。人通りはほとんどない。
振り返るとさっきまでいたタワマンが見えた。周りにそれほどの建物はないため、一際存在感がある。
すっと冷たい風が吹いた。踵を返す。
月明かりを浴び、下を向いたまま清水は帰路についた。